第2回「サンマ」

サンマ

今回のテーマは、庶民の代表「サンマ」です。
日本で食用にされるサンマは、分類学的は、ダツ目サンマ科サンマ属に属します。これは、トビウオやサヨリ、ダツに近い種類です。
サンマは、塩焼きはもちろん、刺身やネギや大葉などの薬味とお味噌をサンマとたたいたなめろうやつみれ汁、蒲焼、また、開き干しなどの加工品も美味しいですよね。


知ってました?サンマってこんな魚

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まず名前ですが、「サンマ」、新潟では、バンジョ、西日本では、サイラなど地方名もあります。
ところで、サンマは「秋刀魚」、秋の刀の魚と書きますが、これは、秋に獲れる刀のような魚というからです。
日本各地からアメリカ西岸に至る北太平洋の外洋の表層に広く分布しています。
成長すると、全長40㎝前後になります。
大きな群れをつくって、日本近海の暖流域から寒流域を回遊しています。
体長20㎝を超えるころから卵を産み始めます。
北西太平洋では、三陸・常磐沖が9~12月、伊豆諸島沖から薩南海域が、1~3月、三陸・常磐沖では4~6月も産卵し、日本列島周辺で、ほぼ1年中産卵しています。
卵は海面を漂流するホンダワラなどの流れ藻に産み付けられます。
平均して、1万から2万粒を何回にも分けて産みます。
孵化までの時間は、水温20℃以上で10日間、水温15℃前後で約17日間位です。
おもにプランクトンを食べ、特にオキアミの仲間を好んでよく食べます。
寿命は、約2年といわれています。


光で集めるサンマ漁

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サンマは、北西太平洋では、7月に小型船による流し網で、この小型船で獲られたサンマは、新サンマとして、ニュースにもなりますね。
そして、棒受け網が解禁されます。
これは、サンマが光に集まる習性を利用した漁法で、夜間に集魚灯を点灯して海面近くに魚を集め、網を一気に持ち上げて漁獲します。
全国で、12月末現在のサンマの水揚数量は、112,255トンで、前年の50%、10kg当りの単価は1,985円で、前年の約2倍でした。
茨城県は、大津港に638トン、那珂湊に1,048トン 計1,686トンの水揚げがありました。
現在、サンマ漁は、大変深刻な問題に直面しています。
漁業衰退で、1989年に500隻を超えていたサンマ漁船は、2006年には200隻を割っています。
でも、最近あまりサンマを見かけなくなったなあなどとは、感じないと思います。
それは、漁船の減った分を漁労機械の発達などで補い、何とか漁獲高を確保しているからです。
サンマ漁船の大きさは200トン未満で、漁獲したサンマは氷蔵して漁港に運んでいます。
さらに漁業に従事される方の減少に加え、消費者の魚離れも深刻です。
国民一人当たりの消費量は、年間5、6匹と言われています。


サンマの体の色の秘密

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さて、皆様、サンマのスリムな体型を思い浮かべてみて下さい。
ピカピカに輝く体色、背中は青黒く、腹は銀白色。
さて、どうしてこのような配色をしているのでしょうか。
これは、サンマは、マグロをはじめ多くの海洋生物の餌でもあります。
自分を目立たなくする、隠蔽色なのです。
隠蔽色といえば、浅い海にすむハゼなどが海底の模様などに自分の体色を似せる保護色が有名です。
しかし、サンマを市場や鮮魚店で見ると、青と白のコントラストは、とてもよく目立ち隠蔽のためとは思えませんよね。
ところが、サンマは背を上にして泳いでおり、光は背中から照っています。
マグロなどは、海水を通して、ふつうサンマを横側から見ることになります。
背中の青色は、上から当たる光によって、ずっと薄い色になり、腹側は背中の影が落ちることによって、かなり暗くなります。
サンマの体はその結果、全体としてかなり一様な明るさとなり、海水を通して横側からみるとかなりの程度に隠蔽されることになります。
もし、サンマの体色がはじめから一様であったら、背中は光に照らされて実際より明るく見え、腹側は背から落ちた影によってずっと暗くなり、かえって目立ちます。
もちろん、サンマを上から襲う海鳥などから見れば、背中の青い色は海の青さのなかで保護色となります。
サンマだけでなく、イワシやサバ、アジなど、海の表層を遊泳する魚類には、背中が青色で腹が銀白色なものが多いのはこのような理由によると考えられています。


さんまの「くちばし」

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ところでサンマのくちばしと言われる(下顎の先端部分)は、黄色や橙色をしています。
中には、あまり色のついていないものがあります。
この色は、時々言われるように雄雌や脂ののり具合、美味しさなどとは関係なく、成長するとほとんどのサンマのくちばしは色づきます。

 

サンマの脂は体に良い!

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脂の乗った丸まると太ったサンマのその脂は、不飽和脂肪酸といって、とても体にいい脂です。これは、動物にはありません。その体にいい脂肪酸、不飽和脂肪酸のn-3系という種類のDHA(ドコサヘキサエン酸)EPA(エイコサペンタエン酸)には、脳の働きを維持向上したり、動脈硬化の原因とされる悪玉コレステロールの生成を抑え、中性脂肪を減少させる働きや、メタボリック症候群などの心血管系の病気を予防したり、癌や糖尿病にもなりにくくする作用があることがわかっています。
DHA(ドコサヘキサエン酸)ですが、私たちの脳に多く含まれていて、多めに食べていると、徐々に脳の中に増えていき、その結果、子供の脳の発達や記憶学習能の維持向上、認知症の予防や症状の改善に役立つと言われています。
現代の日本人は、戦前に比べ明らかに、不飽和脂肪酸の多く含まれる青魚の摂取量が減少してきています。さらに食生活の欧米化も加わり、いわゆる生活習慣病が増加しています。また、n-3系脂肪の不飽和脂肪酸が、血中の中性脂肪を下げるメカニズムが最近明らかとなり、肝臓での脂肪の分解が進み、脂肪の合成が抑えられると考えられています。脂肪合成に必要な酵素の遺伝子を活性化する因子があり、青魚を食べるとこの因子の量が減り、脂肪の合成が抑えられるそうです。魚離れと食の欧米化により、EPA・DHAの摂取量が減ったことから、日本人の動脈硬化、内臓脂肪型肥満が増えていると考えられています。
栄養学的に優れている魚介類を毎日の食事に上手に取り入れてください。

 

 

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